福島県沖地震災害調査:東根・天童・中山

 3月16日23:36頃に福島県沖を震源として発生したM7.4の地震により、宮城県・福島県を中心に甚大な被害が生じました。被災された方々に心よりお見舞い申し上げます。

 山形県では中山町の震度5強のほか広域で震度5弱の揺れが観測されたことから、3月17日に東根市・天童市・中山町で建造物・地形・地盤などの被害調査を行いました。その結果、顕著な変状は認められませんでしたが、ニュースでも報じられている鳥居や灯籠の転倒状況を確認したため、ここに報告します。

↑ 深山神社(東根市羽入)の鳥居の倒壊 (1)上の写真:すでに脇へ寄せられていたが、柱の下部で折れ、手前(南)へ向かって倒れた。排水溝の上に笠木か額束が当たったと見られる白い痕跡がある。(2)下の写真:鳥居の材質は淡緑色を呈する変質した火山礫凝灰岩であり、いわゆるグリーンタフである。径数mm〜1cmの黒、緑、茶などの角礫状の岩片を含む。風化による変質は顕著ではない。

↑ 清池八幡神社(天童市清池)の鳥居の倒壊 (1)上の写真:すでに撤去されていたが、柱の下部で折れて、手前(南)へ向かって倒れた。八幡神社と彫られた石柱や手前のアスファルト上には、落下した柱や笠木の打撃痕(へこみや白い傷)が残されている。(2)下の写真:鳥居の材質は変質した火山礫凝灰岩であり、いわゆるグリーンタフである。径数mm〜1cmの黒、緑、茶などの角礫状の岩片を含む。写真中央部に点在する1cmほどの茶色の粒は軽石か沸石とみられ、その上の黒く細長い粒は炭化した植物片(化石)である。これらは、指先で容易につぶせるほどもろいため、石材の強度を下げたと考えられる。風化による変質は顕著ではない。

↑ 温泉神社(天童市鎌田)の石灯籠の倒壊 (1)上の写真:基礎を残して、竿・中台・火袋・笠・宝珠がそろって北向きに倒れている。材質はカコウ岩(白御影)。参道を挟んで対をなすもう片方の灯籠は転倒していない。ずれも認められなかった。(2)下の写真:基礎の上面、竿との繋ぎ目には薄青色の接着剤が塗られていた。茶色く見えるのは土や砂であり、基礎と竿の間のすきまに入り込んだものである。接着剤の劣化とすきまの存在が転倒の一因となった可能性がある。


 わずかに3例だけであるが、深山神社と八幡神社の鳥居、温泉神社の灯籠は、いずれも南北方向に倒れていることから、南北方向に強い揺れが生じた可能性がある。深山神社と八幡神社の鳥居は似たような石材(火山礫凝灰岩)からなる。もともと強度が低く、かつ過去の地震による疲労が蓄積していたところに、今回の地震が最後の一押しとなって倒壊したのではないかと考えられる。

山形大学災害環境科学研究センター

山形大学 災害環境科学研究ユニット (山形大学 災害環境科学研究センター)

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